無事出産を終えて一安心と思いきや、次々とやってくる体のトラブルたち。
特に産褥期といわれる産後すぐの体は、出産で体力を消耗している上に、妊娠中には想像もしなかった体の痛みや不快な症状がたくさん現れます。
子宮の回復や出産によるダメージによるものなど、症状は様々。
特に産褥期にみられやすい痛みや症状の原因と症状緩和のpointを解説。
まず産褥期とは?
産褥とは、妊娠・分娩を終了した母体が、ほぼ非妊娠時の状態に回復するまでのことをいいます。その期間は一般的に分娩直後から6~8週といわれています。
産褥期にみられやすいトラブル
- 1.子宮復古による後陣痛
- 2.恥骨結合の痛み
- 3.尾骨の痛み
- 4.脱肛
- 5.便秘
- 6.排尿障害
子宮復古による後陣痛
出産直後からおこる陣痛によくにた強い痛みを後陣痛といいます。これは胎盤が剥がれて傷ついた子宮内膜を止血するために、子宮が急激に縮むため痛みが生じます。
また授乳で乳頭が刺激されることで分泌される、オキシトシンが子宮を収縮させることで子宮復古が促進され、子宮が収縮し後陣痛の痛みにつながります。
痛みは産褥1~2日目が強く、多くは産褥3日には軽減していきます。
☆痛み緩和のPoint☆
後陣痛の緩和には、シムス肢位などのポジショニングが効果的です。
恥骨結合の痛み
恥骨結合とは、恥骨の中央にあるすき間のことです。このすき間には軟骨があり、普段はほとんど動くことがありませんが、妊娠後期から出産にむけ、ホルモンによって恥骨結合は緩み、左右や上下方向へのずれが生じます。分娩時には約40ミリ恥骨結合が開大します。
寝返りや起き上がり、歩行などの動作により恥骨結合への剪断力が生じ、痛みが誘発されます。
☆痛み緩和のPoint☆
寝返りや起き上がりの際には、身体をねじることで痛みが誘発されます。肩から腰までをひとかたまりにして、身体全体を一度に回転させて動作を行うことが大切です。
歩行などの動作時には骨盤ベルトの活用と骨盤底筋を収縮させ、骨盤下部を安定させることが重要です。
左右非対称な姿勢をとらない。足を組む、横座り、片方の脚だけに体重をかけた立ち方などをしないなど、日常の姿勢にも気を付けましょう。
尾骨の痛み
分娩時に胎児が通過する際に、仙尾関節(仙骨と尾骨のあいだ)がこじ開けられるように動くため、この関節には大きな力が加わり、周囲の靭帯が損傷することで尾骨の痛みが残ることがあります。
座ったり、咳やくしゃみなどで非常に強い痛みが生じます。
☆痛み緩和のpoint☆
椅子やベットに座る際には、背もたれを使わず骨盤を前傾させて座ります。また低い台に足を置いて状態を軽く前に傾けた姿勢をとったり、前に置いたテーブルに肘をついた姿勢も疼痛緩和に有効です。
お尻の片方にだけ体重をかけて座ったり、長時間の円座の使用は尾骨の変位や尾骨周辺の循環不全を招くため注意が必要です。
脱肛
分娩時の努責や、胎児の頭部による圧迫で、循環が低下し、脱肛を生じることがあります。脱肛は肛門内に環納することができれば痛みは和らぎます。排便の際に、不良な姿勢で過度な腹圧をかけることで再度、脱出してしまうことがあるため排便時には注意が必要です。
便秘
産後数日は、腸管蠕動運動が低下します。これに加え、排便することで外陰部の傷が増悪するのではないかという心理的な影響もあり、排便のタイミングをのがしてしまい便秘になりやすいとされます。
☆脱肛・便秘を予防するpoint☆
なにより便意を感じたらすぐにトイレに行くこと。簡単なようで産後のママにとっては意外と難しいことですが、特に朝食後の便意を我慢しないことが大切です。また正しい排泄姿勢をとること、排泄時にいきまないことが重要です。
産後は発汗も多く、母乳も作られているので、便中の水分が不足しがちです、普段より多く水分をとるようにしましょう。
排尿障害
分娩時の神経・尿道括約筋の圧迫などの影響で、排尿困難、尿閉、残尿、尿失禁などを伴うことがあります。多くは数日間で、自然治癒するといわれていますが、産後3か月しても軽快しない腹圧性尿失禁の約92%は、産後5年経過しても持続します。
☆排尿障害のpoint☆
分娩後数日間は尿意を感じなかったり、感じたとしても遅すぎてトイレに間に合わなかったり、体位を変えた瞬間に尿がもれたりするといったことが起こります。産後のこの時期は、骨盤底筋の収縮力があまりないことや、分娩時の神経の圧迫などの影響で排泄障害が起こりやすいです。
この時期に大切なのは、尿意を感じなくても、定期的に(日中は2時間おき)トイレに行って膀胱を空にするようこころがけましょう。排尿の際にいきまないことも重要です。
産後数か月たっても、腹圧性尿失禁(くしゃみや、ジャンプなどの刺激での尿もれ)が続く場合は、骨盤底筋の弱化や膀胱周囲組織の癒着などの問題が考えられます。
専門知識のある機関に相談し、正しいトレーニング方法を指導してもらうことをお勧めします。
☆この記事を書いたのは福岡の産後セラピストmiyuki